基幹システムにも適用広がる“クラウド化”の潮流
「進むクラウド導入本格化時代のマイグレーションセミナー」
〜 事例に学ぶ、基幹システムのクラウド移行と最新動向を解説 〜
システムズは1月24日(金)、東京・品川区の本社セミナールームで「進むクラウド導入本格化時代のマイグレーションセミナー」を開催しました。ご来場いただきました皆様には改めて御礼申し上げます。
レガシーシステムを新しいIT環境に合ったシステムに蘇らせるアプローチはさまざまですが、メインフレーム市場は縮小を続け、オフコンやC/Sシステムの老朽化やITコストの削減を迫られる企業が増えていく中、クラウドの適用は最も関心の高いテーマの1つだと言えるでしょう。数年前からキーワードになっているクラウドコンピューティングですが、これまでボトルネックとなっていたセキュリティや信頼性などの問題も徐々に解消し、エンタープライズ系のニーズも検討から実需へとシフトが進んできました。クラウドは、まさに地に足がついてきた状況を迎えています。
こうしたニーズを受け、今回のセミナーの最初のセッションでは、実践の進むこのクラウドをテーマに、当社マイグレーション事業本部担当部長の中本周志より、オンプレミスからの移行先としてマイグレーションで検討するポイントについて、実例を交えながらお話ししました。
基幹システム領域のクラウド化は“実需”の段階に
マイグレーション事業本部
担当部長 中本周志
冒頭、クラウド市場規模の拡大状況などを説明しながら、セキュリティやサービスレベル、性能などエンタープライズニーズの対応力の向上により、基幹システム領域に対する企業のクラウド化の動きが顕著になっていることを示しました。さらに、業務特性に応じたクラウド適用を実現させていくためには、システム要件に合うサービスの検討が行われるべきであり、同時に、要素技術の視点でも、運用管理技術はもちろん、Web化や仮想化、マイグレーション技術、そのほか省エネ技術といった、機能実装に必要な要素技術の検討が不可欠であることを強調しました。
オンプレミスな基幹系システムの移行のキーワードとなるのが、「共通基盤」です。本講演では、共通基盤への移行はどうあるべきかに触れ、クラウド基盤整備に向けた検討内容などを紹介しました。中でも対応不可欠なのが、レガシーアプリケーションのクラウド移行にあたって、現在のクラウド基盤構築では欠かせない要素技術である「JAVA」をどのように適用させていくのか、という問題です。古いCUI画面のレガシー環境のままでいいのか、ブラウザ対応させるのか、あるいは全面的にJAVAを採用するのか――。もし、すべて新規にJAVAに切り替えを行う場合、開発コストや期間も膨大なものになります。
COBOL-JAVA連携マイグレーションでクラウド化サポート
そこで、既存資産も活用しながらCOBOL-JAVA連携を実現した事例として、当社が2010年に参画した北海道の「自治体クラウド開発実証事業」をご紹介しました。当社は、大型汎用機で稼働していた道教育庁の人事システムを、自治体クラウドの共通基盤上に実装されたWindows 2008 Server/VmWare上の環境にマイグレーションし、基幹システムのクラウド化を進めました。とりわけ、このプロジェクトでは、当社のマイグレーション基盤を採用したCOBOL・JAVA連携方法を実現したことがポイントとなります。汎用機環境のCOBOLで書かれていたオンライン処理・バッチ処理のプログラムを、オープン系COBOLとして標準的なMicro Focus COBOLに書き換える一方、エンドユーザーのWebブラウザとやりとりする画面出力やキー入力の部分についてはJavaのプログラムで実現しました。新旧システムの画面の比較や、帳票のプラットフォームの移行などについても紹介しながら、マイグレーションが基幹系のオンプレミスをクラウドに移行する際にいかに有効な存在となるかを示しました。
また、オンプレミスなレガシーシステムからのクラウド共通基盤への移行については、OSS(オープンソースソフトウェア)の採用も実践されています。OSS適用による新共通基盤の例として、製造業のお客様がReHat Enterprise Linux およびアプリ基盤としてRedHat JBOSSを採用した実績も取り上げ、クラウド移行のキーワードとなる「共通基盤」について、分かりやすく紹介しました。
汎用機のCOBOLからオープン系COBOLへの変換のデモンストレーション。同系言語なのでリライトは最小限で済むが、このデモではDBが構造型からRDBへ変更されたため、DBアクセスの部分(画面左が旧環境、右が新環境)で多数の書き換えが必要だった
レガシーからオープン化への成功事例を紹介
開発事業本部
マイグレーショングループ
プロジェクトマネージャー 大島理史
セミナー後半では、当社開発事業本部マイグレーショングループでプロジェクトマネージャーを務める大島理史から、レガシーからオープン系への移行を実現したお客様の環境でどんな課題が発生し、それらをどのように乗り越えてきたか、現場の生の声をお届けしました。
前述の通り、マイグレーションでは既存システムの中身こそが青写真となるため、プロジェクトの最初の時点でお客様のIT資産を正確にお伝えいただくことが必要となります。このため、基本設計やテストなど実変換作業の前後の工程では、お客様や保守運用を担当する協力ベンダー様にも一定の作業を分担いただくことになります。当社では、プロジェクトの全工程について役割分担を明確にし、お客様側でどのような体制をご用意いただく必要があるか、最初の段階で丁寧にご説明しています。また、テスト工程ではお客様にテストデータをご用意いただきますが、どのようなデータが必要か、スケジュールはどれくらい確保すべきかといった点は過去のノウハウも含めサポートすることが可能です。このような事情のため、実際のプロジェクトでは当社参画段階でスケジュールの引き直し、役割分担の見直しなどをご提案するケースもありましたが、結果的には当初の予定にあわせて新環境での本番稼働を成功することができました。
また、既存システムを動かしながら新環境の構築を行うため、プロジェクトの途中に既存システムに対して改修が入る可能性があるほか、ディスク容量やネットワーク帯域といったリソース消費が業務に影響を与えないよう注意を払う必要があります。これについてもお客様と密な情報共有を行って改修やテストのスケジュールを調整したほか、システム全体を複数のフェーズに分け段階的に移行することでリスクの低減を行いました。
セミナーでは、当社がどのような技術を用いて精度の高い変換を効率よく行っているか、デモを交えながらその手法をご紹介したほか、プロジェクトで陥りやすい“落とし穴”についてもご説明しました。
今回のセミナーのキーワードともなっているクラウド化やレガシーシステムのOSS移行については、当社では数多くの実績とノウハウをベースとした各種サービスを提供しています。お気軽にご相談ください。 |