システムズのマイグレーションコラム
Vol.10 オンプレミスからクラウドへ
2015.12.18
「オンプレミス」と「クラウド」
サーバやストレージなどのハードウェアやアプリケーションソフトウェアなどの資産を所有しなくても、インターネット経由で企業の求めるIT環境が入手・活用できるクラウドコンピューティングは、ここ数年、多くの企業で最大の関心事となっています。クラウドサービスには、不特定多数のユーザーにインターネット経由で提供されるパブリッククラウド、企業を中心とした特定ユーザーだけを対象に基本的に閉域網を経由して提供されるプライベートクラウドがあり、パブリックとプライベートと社内システムを目的によって使い分けるハイブリッドクラウドの存在も期待されています。クラウドという言葉の登場により、従来のシステムは「オンプレミス・システム」と呼ばれるようにもなってきています。
なぜマイグレーションでクラウドなのか
クラウド化のメリットは、サーバシステムを「保有」から「利用」へシフトすることにより、開発・運用保守コストの削減はもちろん、インフラ調達が容易になるといった手間の軽減も挙げられます。こうした「可用性」や「柔軟性」、「迅速性」といったクラウドの大きな特長は、マイグレーションのようなシステム刷新の場面では大きな効果を発揮すると言えるでしょう。例えば、システム移行開発基盤の準備・返却が容易かつ迅速に行える点です。マイグレーションでは既存システムを稼働させながら移行開発が並行して行われますが、その際、開発基盤の準備に手間とコストがかかっていました。しかし、クラウド基盤を開発環境に採用することで、キャパシティプランニングが容易かつ迅速に行え、また移行開発終了後は、利用契約を解除することで、サーバの固定資産化や開発終了後の有効活用といったことを気にせずに済むようになります。こういったことは一例ですが、クラウド側がリスクや手間を肩代わりすることで、クラウド利用側は、そのメリットを最大限享受でき、マイグレーションの生産性向上が実現、コスト低減も図ることができます。言葉としてすっかり定着したクラウドは、いまや実運用フェーズ。「どのようにクラウド化するか」ではなく、「実際の運用でどういった効果が出せるか」に取り組んでいる企業が増えた今、その流れに後れをとらないようにせねばなりません。
クラウド化は企業競争力の鍵
当社が参画した北海道の自治体クラウド開発実証事業では、OSSの活用により既存資産を活用するマイグレーションを適用しつつ基幹システムのクラウド化を実現しています。また、大手機械メーカーでは、20年以上運用し保守費の負担の大きさに悩んでいた既存システムをクラウド基盤に移行し、セキュアな環境や各事業拠点からのアクセス、迅速なリソースの増減などを得ています。いまや多くの企業が、クラウドへの移行を企業競争力の向上に不可欠なものと捉える中、エンタープライズ系のクラウド移行、ERPのクラウド移行、も増えてくるでしょう。当社では、ERPのマイグレーションにも実績を持っていますが、パッケージとの効率的な棲み分けを実現する部分的なマイグレーションなど、さまざまな選択肢が見られていくものと思われます。